前回、レーザースキャナー(LS)を使った3次元計測を、フィールドで5回行った。本体に挿入していたSDカードに、5回分の測定データが5つのファイルに分けられて記録されている。このSDカードを本体から抜き取って、いよいよ点群データの加工を行う。

SDカードを本体から抜き取る
今回は、ニコン・トリンブルのTX-5という機種を使って測定したので、3次元データの処理も同社のソフトで行う。点群データを処理するソフトは、「Trimble RealWorks」というソフトだ。
 このソフトは、数百万点以上の膨大な生の点群データを現場で必要な状態に加工したり、CADシステムで利用できる形にコンバートするなどの役割を担っている。
Trimble RealWorksの画面
Trimble RealWorksを立ち上げ、スキャンした5つのデータをソフトに読み込ませると、きれいなパノラマ写真のような画像が表示される。これはスキャンした点に、3次元座標に加えてRGBの色データも取得されているので、写真のように感じられる。
写真のようにも見える取得データ
次は、前回スキャン時にフィールドに設置した「ターゲット球」という合成処理用標識を使って、5つの場所から取得した点群データを合成する。RealWorksは、自動的にデータからターゲット球を読み取り、合成してくれる機能がある。また「レジストレーション」という合成ターゲットがなくても合成してくれる機能も持っている。特徴点を自動的に判断して、複数のスキャンによる点群を合成する。
 5つのデータが合成され、現場全体の点群が1つのデータにまとめられた後は、データの加工作業を行う。
 スキャンした点群データには、現場に置いてある建機や生えている草木、作業員など、実際には不要なものも写り込んでいる。また、データ取得するスキャナーの真下も計測できないので、スキャンデータを開くと円形のスキャナー影や三脚の一部のデータが反映されていない部分もある。
スキャナーの直下は、点群がない
不要な点群は、ソフト上で点群を指定して樹木や建機を取り除く。データが少なかったり足りない部分は、違う場所から取得したデータで補う。不要なノイズ点群が除去され、足りない点が補われると、工事に必要な現地盤の3次元データが完成する。
 完成したきれいな現況測量の3次元データは、コンサルから提供された設計図書をもとに、設計データ作成ソフト(トリンブルではBusiness Center-HCE)などで作成した3次元設計データと重ね合わせて、必要な土量計算を始め、現況のTINデータ、現況の縦断面や横断面の切り出しや、コンタ図の作成もできるようになる。
合成が終わった点群データ
地上LSによる計測は、UAVによる空中写真測量に比べ、レーザーで直接、精度の高い3次元座標がとれることや、UAVでは必須の事前飛行計画、飛行手続きなどが不要な面でアドバンテージがある。一方でLSは、スキャナーを人力で置き換えながら計測する手間や、上空からの手軽な計測ができないところが弱点だ。UAVとLSは、現場の状況に合わせて最適なものを選びたい。

建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

 これまでにUAV(無人航空機)を使った点群生成や出来形管理を見てきたが、今回はレーザースキャナー(LS)を使った3次元計測や図面作成への流れを見ていきたい。建機レンタル会社アクティオの協力で、実際のヤードを使用した3次元LSの計測と、計測データから図面を起こすまでの手順を見ていこう。

 前回、写真測量ソフトで点群データを生成、点群処理ソフトのTREND-POINTで、点群データのフィルタリングと現況データ、計測点群データを作成した。今回は連載の12回から15回で作成した「3次元設計データ」との関連性を見てみよう。
 TREND-POINTは、現場の現況の点群データに、EX-TREND武蔵で作った3次元設計データを重ねられる。現況と設計を比べれば、切土すべきか盛土すべきかの判断ができる。起工時には、このデータから現地のどの場所の土を動かすと一番効率がよいかが分かるうえ、実際に測ったデータなので差分土量もすぐに計算できるということになる。
 土量だけでなく、出来形管理も可能だ。現場内の任意の位置で工事断面を切り出せる。定期的にUAVで現場を写真撮影し、現況を更新していけば、施工管理にも役立つ。ここがi-Constructionの大きな導入効果の一つだ。
 また出来高の部分払いにおいても、こうしたデータは活躍する。
 15の基準類の12番目の「部分払いにおける出来高取扱方法(案)」では、要領に従ったICT重機の施工履歴データや、UAV、レーザースキャナ(LS)で概略数量を算出した場合には、算出数量の9割を出来高数量にできるとしている。

◇ヒートマップでの管理

 出来形管理の監督・検査要領には「出来形管理図表の確認」「電子成果品の確認」という項目がある。出来形管理図表については、「ヒートマップ」を使った出来形合否判定総括表が導入される。これについては、9月に福井コンピュータを始め、他のソフトウエアベンダーからも対応製品が発売される予定だ。
 ヒートマップはUAVを使って、平場、天端、法面のすべての出来形計測を行う個所で、10cmメッシュに1点以上の出来形座標値を取得し、データの間引きやグリッドデータ化で1㎡当たり1点以上の出来形評価用データを作成して出来形評価を行う。規格値に比べて異なっているメッシュを色分けして表示する(法肩、法尻からプラスマイナス5cmは評価から外す)。
 これまでの出来形管理は、断面という線の評価だったが、ICT活用工事では面での評価になったといえる。



◇電子成果品の中身


 要領には、提出すべき電子成果品が7つ列挙されている。これを解説していこう。「(1)3次元設計データ」は、文字どおりTINによる設計データファイル。「(2)出来形管理資料」は、さきほどの出来形管理図表のことで、PDFかビューワー付きの3次元データを用意する。「(3)UAVで撮影したデジタル写真」は、実際にUAVで撮影したJPGファイルをすべて提出する。
 「(4)UAVによる計測点群データ」は、データを処理する前のオリジナルな点群データのことで、ポイントファイル形式で用意する。
 「(5)UAVによる出来形計測データ」は、数量算出に使うもので計測点群データを加工して不要点を削除したもの。10cmメッシュに1点以上の点が必要。TINデータを作成して提出する。「(6)UAVによる出来形評価用データ」は、出来形管理帳票(ヒートマップ)作成に利用した点群データを出来形評価用データと呼び、このデータをCSVなどのポイントファイルで提出する。
 最後は「(7)工事基準点および標定点データ」で、TSなどで計測した座標をポイントファイルで提出する。UAVで撮影する時に、計測結果を現場座標系へ変換するために必要で、パイロットにもある程度の測量知識が必要となる。

 前回は、UAVを現場で飛行させて写真を撮影するための準備までを解説した。今回は撮影計画から、どのように実際のデータにするかを学んでみたい。
 Aさんは、UAVとカメラの機種選定をすませた。次に必要なのは撮影計画だ。
 撮影計画では、自分の現場の撮影コース、飛行高度、写真のラップ率を決める。また避けて通れないのは、安全確保のための「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」に準じた飛行計画を立てることだ。
 UAVを飛行させるには、改正航空法で、空港周辺、150m以上の高さ、人口密集地(DID地区)では必ず許可が必要になる。またそれ以外でも夜間や目視できない範囲、人や物から30m未満の飛行などでも承認がいる。現場の環境がこうした条件に該当すれば、政府の電子申請システムで許可・承認申請を行う。大抵は10開庁日で許可が下りるが、UAVの操縦者に求められる「飛行経歴・知識・能力確認書」のハードルがやっかいだ。
 必要な知識と能力は、(1)種類別に10時間以上の飛行経歴がある(2)航空法関係法令に関する知識、安全飛行に関する知識と技術がある(3)飛行前点検と安定した離着陸、飛行の能力を持っており、自動操縦の知識がある--などとなる。
 民間でドローンの検定などを行っている企業もあるが、検定をとらなくても現状では申請に添付する確認書を記載すれば問題ないようだ。監督者の署名欄もあるが、個人申請では自署だけでも差し支えないとの記載がある。

◇撮影計画と測量ソフト

撮影計画を立ててくれる「Pix4Dcapture」


 飛行許可が下りれば次は撮影計画だ。撮影計画は、UAVをどのように自律飛行させて空中写真を撮っていくかというものだが、現状では工事関係者がそのノウハウを得ることが難しい。産業用UAVでは、それを扱う会社に外注するのが早道だ。
 海外には撮影計画を立ててくれる「Pix4Dcapture」というアプリもある。これは点群化したいエリアや座標系、登録されたUAVモデルなどを指定すると、点群化に必要な飛行ルートで飛行・撮影する。
 さらにPC版のPix4Dmapperにそのデータを移すと、撮影後の写真を合成して3次元点群データも作成してくれる。また前回紹介したが、同様の写真測量ソフトではAgisoft社の「Photoscan」、トプコンの「Image Master」、acute3D社の「ContextCapture」なども同様の機能を持っている。

◇点群処理ソフトへ

土量計算により出来高算出するTREND-POINT


 こうして写真測量ソフトを使ってUAVで撮影した写真から、3次元の座標を持つ「計測点群データ」を作成することができた。
 これはデータ処理前のオリジナル点群データで、ファイルはcsvかLandXMLなどのポイントファイル形式だ。次は「点群処理ソフト」にデータを処理させよう。このデータから不要点や草木、車両などを除去したり、点群密度を調整するなどのフィルター処理を行って、現場の起工測量用の土量算出や、切土盛土の判断などを行うためのデータを作成する。出来形帳票作成や出来高算出にも使えるデータにする。福井コンピュータの製品では「TREND-POINT」がそのソフトになる。
 TREND-POINTは、点群データにTIN形式の設計データを重ねて現況との比較ができたり、土量計算、断面表示といった機能があるが、コマツのスマートコンストラクションのKomConnectにもこの技術が採用されている。また、i-Constructionに規定されている「3次元モデルのビューアー出力」機能もある。


 Aさんは、ある地方整備局が発注したi-Construction対応型工事(ICT活用工事)を、見事受注できた。早速、現場でUAVを使って空中写真測量をすることにした。「でも、ドローンもいろいろ種類があるし、どんなカメラを使えばいいのかもわからない。写真を撮ったあと、具体的にどんなソフトを使えばいいのか」。極力、自社だけの力でICT活用工事に取り組みたいAさんは悩んだ。
 そんなときは、ことし3月末に整備された15の基準類のうち13番の『空中写真測量(無人航空機)を用いた出来形管理の監督・検査要領(土工編)』を開いてみよう。国交省のHP(http://www.mlit.go.jp/common/001124403.pdf)からダウンロードできる。


 i-Construction対応型工事(ICT活用工事)では、以下の5つの技術を活用することが、入札説明書と特記仕様書に明示されている。(1)3次元起工測量(2)3次元設計データ作成(3)3次元ICT建設機械による施工(4)3次元出来形管理などの施工管理(5)3次元データの納品となる。



 前回までに「EX-TREND 武蔵」建設CADで、発注図面から3次元設計データを作成した。2次元で描かれた平面、縦断、横断3種類の図面から生成した3次元モデルは、3次元マシンコントロール(MC)ブルドーザーや、3次元マシンガイダンス(MG)、MC油圧ショベルといったICT建機に搭載して使う。
 建設CADからのデータ書き出しは2種類ある。1つはLandXML形式、もう1つは汎用のCADフォーマットであるDXF形式だ。左側メニューからいずれかを選び、ファイルを書き出す。同メニューからは、TS出来形用の基本設計データXML形式での出力やグーグルアース向けファイルも書き出せる。
武蔵の建設CADからDXF形式でデータを書き出す



 前回、発注図書の平面図から工事の主要座標や基準点、カーブを入力した。次は縦断線形を入力する。建設CADは、3次元データ作成の機能を立ち上げると左のカラムに入力するべき順番どおりにメニューが現れる。
 縦断メニューをクリックすると読み込んだ発注図書ファイルから縦断図を選び出して、メーン画面の上段にエクセルのような表で、測点名、追加距離、計画高、VCL(縦断曲線長、バーチカル・レングス)、R(曲線半径)の入力画面が現れる。
縦断図に高さ情報を入力する

 また下部には、縦断図が表示され、表に数値を記入するとリアルタイムに縦断設計データのプレビューを確認できる。入力ミスを防ぐために、縦断図の数値をクリックすると図面から直接数値を読み込んで、表に転記してくれる機能もある。
 今回の図面では、縦断方向で3カ所の変化点があるためBPとEPの間に3つのデータを追加する。

◇横断図面を取り込む

 平面と縦断のデータ入力が終わったら、いよいよ道路の断面を入れていく。これまでの段階では道路のセンターが決まっているだけだが、今回は10mピッチで横断図が用意されているので、140m分の15カ所の横断図をトレースする。
横断図をトレース

 左側メニューの「横断」から計画を選択、断面を1つドラッグで選ぶ。するとソフトの方で中心線の距離基準とDL線の高さ基準値を自動的に取得、同時に測点名、図面縮尺もフォームに取り込んでくれる。入力者はその数値が正しいことを確認して、BPからの追加距離を打ち込む。
 この作業で平面と縦断のセンター位置に、各横断図面がプロットされる。また横断形状は、マウスで計画断面の始点と終点を選択すると、ソフトが自動的に法面や道路面、小段などを認識して候補として表示してくれる。


横断面をすべて入力すると現れる3次元データ
EPまでの15の横断面で同じ作業を繰り返して登録すると、ソフトの3次元表示画面に、きれいな3次元モデルが現れた。道路面は灰色に、センターラインは白、法面は肌色、小段は緑と色分けもされている。このモデルは、マウスで自由に動かすことも可能で、初心者の記者としては、数十分の作業でここまで美しい3次元モデルを作れたことに驚いた。
 それぞれの横断図も、法面の勾配と斜距離や、道路面の距離、センターからの離れなどがデータ化されている。

◇TS出来形管理にも

 この段階で、設計図面どおりに3次元データの作成が完了した。もしこのデータを「TS出来形管理」に使う場合、工種の設定、出来形の設定も行うことができる。
 きちんとデータを作れば、ソフトの方である程度の構成要素を付加してくれるが、手動で設定もできる。その後、工種設定として、掘削工、路体盛土工、路床盛土工、地下構造物配置なども可能だ。
管理項目も表示される

 出来形設定メニューでは、基準高、幅、法長、深さ、厚さ、延長、面積、断面積といった管理項目を設定できる。管理項目は、これまでの手順でデータ作成していれば自動で設定されるが、手動での変更も可能だ。

 平面、縦断、横断図の図面照査が終わったら、いよいよ現場の座標を登録する。現場に設置する複数の工事基準点をX、Y、Z座標で入力し、路線主要点となる道路線形の各測点をX、Y座標で入力する。
 今回使用する図面では、工事基準点がT1からT12までの12点。路線主要点が初点のBPから始まって、単曲線のBC1、EC1、次にクロソイド曲線を構成するKAからKEまでの4点、そして終点EPまでの合計8点を入力した。
 今回使用した「EX-TREND 武蔵」建設CADには、入力した座標を音声で読み上げ確認してくれる機能もある。
座標を入力し終わったところ。読み込んだ図面上に座標がプロットされる


◇3次元設計データ作成

 建設CADは、図面を作成する機能以外にも、杭打ち計算やトラバース計算機能なども持っているが、今回は「3次元設計データ作成」機能を使う。
 先ほど工事に使用する座標が入力し終わったので、平面線形から入力する。計算設定で、座標や距離の計算で数値をどこまで丸めるかを決める。今回はXY座標が小数点以下6桁で四捨五入、距離は4桁、勾配や地盤高は3桁に設定した。
 次に計算条件として計算方法は、エレメント法、No杭は10mピッチで打つ設定にした。
 使用する図面は、長さが140mの対向2車線の道路を盛土と切土で構築する設計になっている。
 いよいよ道路線形を入力する。数値で入力することも可能だが、今回は「ウィザード」を使って、対話式に設定値を入力する方法をとった。初心者でもこの方法なら、分かりやすく線形入力できる。
 まず図面全体の初点に「BP」、終点に「EP」を指定し、カーブを追加していく。この図面では、単曲線が1つ、クロソイド曲線が1つのS字形状道路なので、まず初点よりの単曲線要素であるBC1とEC1を指定、曲率(R)を図面に書いてあるとおり15.00と打ち込むと、見事に座標上にカーブが現れた。
見事に2つのカーブが現れた


◇クロソイドカーブ

 次は2つめのカーブを入力する。クロソイド曲線(緩和曲線)、単曲線、クロソイド曲線の組み合わせなので要素が若干多い。クロソイドカーブとは、曲線半径が一定の率で変化するカーブで、曲がり始めのクロソイド曲線はハンドルを同じ速度で回し、単曲線の区間ではハンドルを固定、カーブの終わりのクロソイド曲線にハンドルを同じ速度で戻すことで、運転者がスムーズに曲がれる仕組みだ。
 データ入力では、始めのクロソイド曲線の始まり(KA.2-1)、終わり(KE.2-1)の座標点名と、パラメータ(曲率の変化率)(A)、曲線半径(R)を指定する。次に単曲線部分のRを指定、さらにカーブ出口側のクロソイド曲線の始まり(KA.2-2)と終わり(KE.2-2)の座標点名、パラメータ(A)に、半径(R)を打ち込む。
カーブを入力後、センター表示で10メートルピッチの測点が登録される

 必要な項目を入れてOKすると、きれいな曲線が座標上に描かれた。またIP点(インターセクション・ポイント)も自動的に算出される。最後に「センター表示」というボタンをクリックすると、プログラムが自動的に10mピッチで測点を追加してくれる。

前回までは、実際のフィールドで測量系実習を展開してきた。i-Construction(アイ・コンストラクション)で実際に道路土工などを行う場合、避けては通れないのが「3次元設計データ」の作成だ。ICT建機を現場で動かすためには、重機を動かす受注者が2次元のCAD図面から3次元座標データを作成する必要がある。
 講習会メンバーは、東京・銀座の福井コンピュータグループ銀座事務所で、施工管理ソフトである「EX-TREND 武蔵」の建設CADを使って、設計データの作成実習を行った。コンサルから受領した2次元平面の発注図書の縦断、横断図から、マシンコントロール(MC)、マシンガイダンス(MG)重機に転送する3次元設計データを作成する。
「EX-TREND 武蔵」の建設CAD

コベルコ建機は6月1日に「ICTホルナビ推進室」を創設。建設現場の生産性向上を目的に、国土交通省が2016年度から本格始動させた「i-Construction(アイ・コンストラクション)」の施工現場拡大を背景に、専門的に対応できる組織体制を固めた。選ばれる建機メーカーとして生き残るため、どう差別化を図るのか。6月末から室長として推進室を率いている絹川秀樹執行役員に聞いた。


 トータルステーション(TS)の測量実習から約1カ月後。今度は千葉県市原市にあるアクティオの千葉トレーニングセンターで、GNSSを使った測量実習を行った。情報化施工におけるマシンガイダンスやマシンコントロールでは、TSかGNSSで重機の自己位置を知らせる。GNSSでは衛星からの信号を利用するため、TSよりも範囲に縛られず柔軟に運用できる利点がある。

TSとGNSSの違いを学ぶ


▽RTKとVRS方式

 現場でよく利用されるのは、リアルタイムキネティック測位(RTK)と、ネットワーク型RTK測位(VRS)だ。RTK測位では3次元座標がはじめから分かっている既知点にGNSSアンテナと受信機(最近では一体化しているものも多い)を据えて基地局として定め、重機やローバーに搭載したもう一基のGNSSアンテナを移動局として使う。現場のアンテナと受信機は5つ以上の衛星の信号を解析して位置を確定するが、基地局の座標と衛星からの解析座標に差違が生じた時に、動かない基地局の情報から移動局に「補正情報」を送信して精度を保っている。
固定局から補正情報を受ける

 もうひとつのVRS方式は現場に基地局を置かず、現場近くの数点の電子基準点から現場に仮想基準点を計算上で求め、これを基地局の代わりに使う。
 電子基準点は国土地理院が管理して24時間測位が受けられており、この情報を基にジェノバのような補正情報配信会社がRTK法の解析を行い、携帯電話網などを通じて移動局のGNSSアンテナの座標を補正する仕組みだ。VRS方式は基地局がいらないので、移動局だけを重機やローバーに取り付けて、ネットワーク補正情報を受ける環境を整えれば作業が始められる。

既知点に基準局を立てる


◇基地局を設置

 講習会では、センター内に基地局を据える作業から始めた。まず工事基準点上に基地局のGNSSアンテナを正確に設置する。基地局の運営には電源も欠かせない。半日程度であれば内部バッテリーでも可能だが、長時間継続的に運用する場合は、稼働のための電源が必要だ。現場事務所の屋根に設置したりするケースもある。
 設置が済んだら、移動局となるGNSSアンテナに補正情報を送信するため無線方式やチャンネルを設置する。移動局側でも同様に基地局と通信するための無線やチャンネルを設定し、両方の局がきちんと稼働しているか確認する。
 衛星信号は、補足している衛星数が少なかったり、何かに反射して電波障害が起きている状態(マルチパスと呼ばれる)が起こると「FLOAT」と呼ばれる位置確定できない状態になるのできちんと対応したい。講習では、すべての参加者がローバーを持って計測点を測量し、ミリ単位の精度で3次元座標を測ることができた。

設置が終わった基地局
移動局を使って座標を測る
ローバーを使って一人で計測も可能だ
計測の際は円形気泡管を見て垂直をきちんととる
結果発表


◇ローカライゼーション

 GNSSを使った情報化施工では、TSにはない「ローカライゼーション」という作業が必要だ。通常の現場施工は、TSによる平面位置測量と水準測量による標高で工事座標を決めている。しかしGNSSは衛星からの信号が測量根拠になるため、通常の地上測量で求めた工事基準点と、衛星から求めた工事基準点の座標の精度差を平均的に局地化(ローカライゼーション)しなければならない。
 この機能は通常、GNSS計測機器に付属している。メーカーごとに若干の差はあるが、一般的には、工事範囲を包括する工事基準点の3次元座標を入力しておき、GNSSで各工事基準点を測量し、計測値と入力値の差分を確認、誤差を補正する。



 茨城県土浦市にある道路会社のテクノセンターで行ったトータルステーション(TS)での測量実習。前回は、TS測量の概要をお伝えしたが、今回は実際の実習で、初心者が計測するとどんな結果が出たのかをリポートする。

 これまでの連載で、情報化施工の概論が終了した。今回からは、いよいよフィールドでの実機研修となる。実習の舞台は、茨城県土浦市にある道路会社のテクノセンター。参加各社から約20人が出席した。出席者のうち数人は、トータルステーション(TS)を扱った経験があるが、ほとんどの人は三脚の据え付けも初めてだ。
 情報化施工で重機をコントロールしたり出来形計測する場合、TSを工事基準点に据えることから始まる。工事基準点杭の上に三脚を据え、TSの中心が正確に一致するように合わせる。まず三脚を水平に据え、脚を踏み込んで動かないように固定する。次にTS本体に3つある整準ネジの手前2つを使って、円形気泡管を見ながら左右の水平を取り、奥の1つで前後の水平を調整する。本体の水平がとれたら、整準望遠鏡を使って基準点杭の中心を正確に合わせる。TSにも整準コンペンセーターがついており、精密に水平を合わせることができる。
TS設置のフロー


 土工の中心となるブルドーザー、バックホウの情報化施工を見てきたが、もっと導入しやすい情報化施工もある。ローラーなどの締固め管理だ。国土交通省は2003年にTS・GNSSを用いた盛土の締固め情報化施工管理要領(案)を策定、その後12年に同管理要領と監督・検査要領をまとめている。国交省は土工だけでなく舗装の転圧やコンクリートの締固めにも応用を勧めている。実際、この締固め管理手法は、ブルドーザー、ローラー、振動コンパクターなどで利用され、ダム堤体工などでも多く使われるようになってきた。